年間20ミリシーベルトまで放置するのか
2011-04-28


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この地図をご覧ください。これは [URL]に載っている福島県の学校の放射線測定値マップです。最初に開くとほとんど真っ赤なのに驚きます。それは地表1センチメートルの値だからです。すでに土地がこんなに汚染されていることが分かります。人体への被曝量を計算する地上1メートル高の測定値で見たのが上の図です。
 赤色は、国の新たな基準である年間20ミリシーベルトを上回る学校です。オレンジ色でも、これまでの基準1ミリシーベルトを上回っています。福島第1原発から60キロメートル以上離れた福島市でも赤やオレンジになっていることがわかります。これはショッキングなデータです。
 アメリカ政府は自国民に対して、福島第1原発より80キロメートルを避難区域と勧告しています。 アメリカ合衆国エネルギー庁が4/18に発表した年間累積被爆量予想図(スライド3)を見ると、一般公衆の被爆限度である年間1ミリシーベルトを超える(青色)のが、概ね80キロメートル圏内であることがわかります。ここから、アメリカ政府は自国民の健康を守る基準を1ミリシーベルトで考えていることが理解できます。
 一方、日本政府は、福島県の住民に対して、乳幼児から子ども妊婦も含めて、すべて一律に年間20ミリシーベルトまでは被曝をしても良いとしました。 文科省のパンフレットには20ミリシーベルト以下なら「これまで通りで支障なし」と書かれています。学校に配布したパンフレット最後のページにはこんな図が載っています。この間すっかり見慣れた 「日常生活と放射線」という図です。ここに、20ミリシーベルトのラインを引いて見せなければいけないでしょう。なるほど、X線撮影400回分かと分かるように!
 国が今回の理不尽な決定にあたって根拠としている ICRPの声明には、こう書かれています。「放射線源が制御されても汚染地域は残るでしょう。当局は、人々がその地域を見捨てるより住み続けることができるように、あらゆる必要な防護措置を講ずるはずです。このケースでは、委員会は、(放射線被曝の)参考レベルを年間1ミリシーベルトにするという長期的目標の元に、参考レベルを年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトの範囲で選ぶという勧告を継続します。(ICRP2009b48-50節)」(筆者訳)このICRP勧告で20ミリシーベルトが適用されるのは世界初のことだと思います。この勧告にも大きな問題がありますが、それにしても、国は「あらゆる必要な防護措置」を取っているのか、あるいはなぜ上限の20なのか、なんら説明していません。
 同じくICRP勧告では、100ミリシーベルト以下の被曝については「直線式しきい値なしモデル(LNTモデル)」を適用するとしています。簡単に言えば、被曝線量と発ガン確率は比例して増加するということです。これに基づけば、20ミリシーベルトの被曝で0.1%の上昇すなわち10万人当たりで100人の発生確率増加となります。これは全年齢平均ですから、年齢が下がるほど確率は高くなります。しかも、これまでのデータは広島・長崎のように一度に被曝したときの影響ですから、長期にわたって低線量被曝を受け続けるという状況についてはまだデータがありません。
 国は、このようなリスクを一切説明していません。また、被曝軽減のための一切の防護措置もとろうとしていません。線量の高い今は、とにかく子どもたちだけでも安全地帯に避難させるべきです。そして、今のうちに表土の剥ぎ取りや除染作業を行って、できる限り汚染を取り除いて、安全な状態に戻さなければいけません。そのような計画すら示していません。今回の国の20ミリシーベルトの決定は、あまりにも命を軽んじた暴挙です。

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