原発なしでも電気は足りる
2011-04-05


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「原始時代に戻れますか!」なんて言われると、一瞬ぐらっときませんか。「原始時代」と聞いて、いきなり荒野に放り出されたような不安を覚えます。そして「やっぱり電気がないと・・」って思います。結局、「原発も仕方ないかな・・」って消極的に受け入れる。そういう人が多いのではないでしょうか。「原始時代」は大げさですが言葉のイメージはとても強い。実はこのような脅し文句こそが最大の「風評被害」だったのです。これまで国や電力会社は、放射能の危険については「小さく小さく」、電力の不足については「大きく大きく」言ってきましたし、今でもそうです。はたして、本当に「原発がないと電気が足りない」のかどうか?突き詰めれば、「原発がないと生きていけない」のかどうか?考えてみましょう。
 1年を通じてみれば電気はあり余っています。平均すれば全発電能力の半分くらいしか使っていません。それなのに、なぜ足りないのでしょう?電気は溜めることが困難です。だから、需要に合わせて発電しなければなりません。1年中で最も電気を使うのが、真夏の平日の昼間です。猛暑の2010年度のデータはまだ発表されていませんので、2009年で見ます。 図-pdfファイル
 この年のピークは8月7日午後3時、この時全国で、約1億6000万キロワットを記録しています。これに対して供給能力(年度当初計画、設備能力ではありません)は、約2億キロワットでした。この最大電力を記録した時、原子力が約3400万キロワット分発電していました。これは計画供給力の109%です。火力と水力をあわせて約1億2300万キロワット、これは計画供給力の75%です。では、もしも水力と火力が100%計画通り供給すると、それだけで1億6500万キロワット。つまり、「真夏の最大電力も、原発なしで足りる!」
 日本では原子力をフル稼働させ(もちろん定期点検中は除く)、メインとなる火力を休ませながら電気を作っています。需給バランスの調整は火力発電所を止めたり動かしたりして行っています。発電設備容量で全体の20%の原子力が30%近い発電を行っています。2割分の発電施設しかないのに、「私たちの電気の3割は原子力です」などと宣伝しているのです。原子力がなければすぐにも困るというようなこと本来はありません。いつの間にか、ないと困るような仕組みにされているのです。
 今後は、まずはピークを下げる、そして火力の活用、さらなる節電と省エネなど、ありきたりのことですがその気になってやれば十分乗り切ることが可能です。ウルトラCは必要ありません。いずれにしても「電力危機」を煽るほど切羽詰った状況にはないのです。去年の猛暑で再び記録更新したところも多いようですが、1995年頃から最大電力は横ばい状態で、このところ景気低迷のせいもありむしろ減少傾向にあります。電力各社は、電力需要を増やそうと、オール電化システムの売り込みに力を入れてきました。最大電力が1億キロワットを越えたのは1983年、1億5千万キロワットを越えたのは1994年、そんな昔のことではありません。現在の発電システムから原発をなくしたって、決して「原始時代」に戻ることなんてありませんからご心配なく。それより「原子時代」はもうゴメンです。

 今回の事故で東京電力は供給計画が大幅に狂い混乱しています。しかし、電気が足りないのではありません。知恵が足りないのです。混乱の中、安易に計画停電を実施しましたが、これには電力不足をアピールして、原発の延命を図るという側面も隠されているのではないかと思ってしまいます。関東がこの夏をどう乗り切るか、みんなで「知恵」を絞りましょう。すでに、ピーク抑制のアイデアはいろいろ出始めています。

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