やはり津波の前に壊れていた1号機〓保安院解析
2011-12-15


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「地震によって配管に亀裂ができ冷却水が失われていた可能性がある」とする解析結果が出てきました。それも国側から。これまで「地震では壊れなかった。しかし、想定外の津波によって全電源を失って冷却不能となり、メルトダウンが起きた」というのが、東電と国の言い分です。国もその立場で全国の原発の緊急安全対策を行っています。ところが、今頃になってこれです。こんなことはすでに3月の時点で多くの専門家が指摘していたことです。この解析結果は非常に重要な意味を持っています。なぜなら、原発安全神話の完全崩壊を意味するからです。それなのに、あまりマスコミに取り上げられていないようです。不思議です。
 「福島第一原子力発電所1号機非常用復水器(IC)作動時の原子炉挙動解析」という報告書がそれです。作ったのは経産省所管の 独立行政法人原子力安全基盤機構、発表は12/9です。なお、同機構は全国の原発の安全検査を行う機関でもあります。
 「解析」というのは一種のシミュレーションです。原発事故というのは現場検証ができません。放射能のため現場に近づけないので実際に配管を調べることができるのは何十年も後のことです。そこで、記録されたデータを分析し「どんなことが起きればそのようなデータが出てくるのか」ということを様々なケースを想定してシミュレーションします。そして実際のデータとシミュレーション結果がぴったり合うケースが、最も「あやしい」ということになる訳です。
 「漏えい面積0.3平方cm以下の場合は原子炉圧力・原子炉水位の解析結果と実機データとに有意な差は無い」という解析結果が示されています。簡単に言えば「0.3平方cmの亀裂ができて水が漏れた」ことをデータは示しているということです。0.3平方cmといえば、例えば幅1mmで長さ3cmというような小さな亀裂ですが、こんな小さな亀裂からも漏えいは、毎時7.2トン(毎秒2リットル)と見積もられています。漏れた場所はAB2系統ある再循環系ラインのA系のどこかと想定しています。
 1号機ではスクラム(地震による緊急停止)から6分後に非常用復水器(IC)が自動起動しています。これはスクラム直後に主蒸気隔離弁が閉じて原子炉内の圧力が上昇したため、蒸気を非常用復水器に回して冷やすことによって圧力を下げるために起動しました。ところが、この後の圧力の下がり方があまりに急激でした。わずが10分間で72気圧から46気圧までいっきに26気圧も低下しています。通常ならICを作動し続ける状況にもかかわらず、運転員がわざわざ手動でICを止めました。この操作が大きなナゾでと言われています。その後20分くらいの間に手動で起動停止の操作が3回繰り返されています。そして津波襲来、全電源喪失に至り、ICが停止したまま次第に圧力が上がり、ついに主蒸気逃がし安全弁が開いて蒸気が抜け始めました。水素も出てきます。ついに水がなくなってメルトダウン。さらに水素爆発。メルトスルー・・・
 非常用復水器(IC)の停止操作はなぜか?ICは原子炉を冷却する最後の手段だったのになぜ止めたのでしょう。田中三彦氏は運転員は地震による配管損傷で圧が抜けたと判断したのだろうと推測しています。また、小出裕章氏は(IC起動後の急減圧から)IC回路系配管の損傷を疑ってそれ以上の冷却水喪失を防ぐため止めたのだろうと推測しています。どちらにしても、冷却水が漏れていることを疑って命綱であるICを止めたと見ているのです。これに対して、東電は「運転員が原子炉の破損で放射性物質が屋外に放出されるのを恐れて一時手動停止させた」と最新の報告で言っています。しかし、この説明はスジが通っていません。冷却しなければ原子炉が破損するのですから。そして、いまだに地震による配管損傷をかたくなに否定し続けています。

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