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11月27日に北海道を襲った暴風雪の影響で長時間にわたる停電事故が起きています。この事故は中央のメディアでも連日取り上げられ、あたかも大停電のような大騒ぎが続いています。産經新聞などでは「泊原発再稼働なしでは北海道の電力危機は続く」と総選挙を意識したこじつけ報道までされています。そこで今回はこの停電事故について考えてみたいと思います。
北海道電力によると、11月27日室蘭市をはじめ胆振、日高管内などで最大約4万1千戸で停電が発生したのは、暴風雪で送電線が振動し、送電が自動停止したことが主な原因とみられるとしています。さらに道央と道南を結ぶ道南幹線も一時自動停止しましたが正午までに復旧しています。これらは着雪や着氷した送電線が強風のため上下に振動する”ギャロッピング現象”が起こったためと考えられます。異常振動発生により送電を停止すること自体は安全対策ですから、ある意味事故とまで言えません。しかし、今回は6万6千ボルト送電線(66k幌別線)の鉄塔1基が強風のため倒壊したり、強風による送電線の切断やショートも重なったため復旧に時間がかかり長時間に渡る停電となりました。
27日午前3時過ぎから停電が発生、その日は最大で5万6千戸が停電しました。翌28日には多くが復旧して午前10時で1万1千戸になりましたが、昼頃再び停電が発生して4万2千戸が再び停電、そして午後には1万弱、同日夜までには約8千戸まで減りました。29日正午でも登別市で6800戸の停電が続いていましたが、今日30日昼までにようやく全てが復旧しました。最長で3日半の停電でした。
最大で5万戸以上の停電が起きましたが、大部分は強風による送電停止で、その後すぐに復旧しています。1万戸弱が鉄塔倒壊による長時間送電停止の影響を受けて一部は避難したりしていましたが、そこばかり繰り返し報道されていました。
問題は6万6千ボルトの高圧送電線鉄塔の倒壊ですが、これについては今後原因究明がされるでしょう。問題の鉄塔は44年前のもので相当老朽化しています。さらに高速道路を跨ぐように電線が張られているために隣の鉄塔までの距離が通常より離れていました。北電は設計強度以上の強風が吹いたとしていますが、設計強度が風速25mというのは頼りなさ過ぎです。今回の低気圧では最大瞬間風速30mという予報が出ていました。北海道では40年前に暴風雪のため50基の鉄塔が倒れて4日間停電する事故があり、それ以後に作られた鉄塔は強度が増しているといいます。しかし、老朽化した送電鉄塔は厳しい自然環境の中至る所に残っています。
北海道は自然エネルギーの宝庫として期待されているのですが、そのネックとなっているのが送電網の脆弱さなのです。自然エネルギー発電を効率的に消費地に送電するネットワークがありません。今後巨額の投資が必要となるため北電は及び腰です。
6万6千ボルトの送電ラインは基幹線には位置づけられていません。支線扱いなので放射状配線となっています。つまりどこかで切れるとその先には電気が送られなくなるのです。重要基幹線は基本的にループ配線なのでどこかが切れても、もう一方を伝わって電気が送られるようになっています。6万6千ボルト線も端末変電所間を繋ぐ重要ラインなのですからループ化できないのでしょうか。そうすれば全体がネットワークのようになり、より停電しにくいシステムになるはずです。
今回、道央と道南を結ぶ道南幹線も一時停止しました。これは大動脈ですから、道央から道南への送電がストップして、道南つまり函館方面にかけての半島部全体が停電する可能性もありました。しかし、松前半島の知内火力発電所(70万kW)が稼働していたために南からの送電が維持され広域大停電を免れました。
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